TCFD提言に沿った情報開示
TCFD提言への取組み
相鉄グループは気候変動問題を重要な経営課題の一つに位置付け、2022年3月24日に気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言への賛同を表明しました。事業特性上、環境への影響が大きいと想定される事業を対象とし順次、対象事業範囲を拡充してまいります。
- 2022年度は、鉄道業およびバス業を対象として分析を行いました。
- 2023年度は、不動産賃貸業を対象として分析を行いました。
ガバナンス
相鉄グループは、相鉄ホールディングス社長を委員長とした「相鉄グループサステナビリティ委員会」を設置し、気候変動対応を含む環境負荷の低減に向けた対応方針および実行計画などの審議、各種取り組み実績の総括・評価をしています。これらの内容は、グループを横断する「相鉄グループサステナビリティ推進会議」を通じて展開・推進されています。
また、相鉄グループサステナビリティ委員会での審議、総括・評価の結果を取締役会に報告し、取締役会の監視・監督を受けています。
サステナビリティ推進体制戦略(シナリオ分析)
気候変動により本分析の対象とする事業が直面するリスク・機会を抽出しました。
1.5℃シナリオでは、4℃シナリオに比べて「移行リスク」が強まり、脱炭素化に向けた温室効果ガスの排出などにおける法規制の強化、温室効果ガス排出価格の上昇による運営コストの増加が懸念されます。また、社会全体で環境配慮に対する意識が高まることにより、お客様もより環境負荷の少ない選択を行うようになり、さまざまな影響を及ぼすことを想定しています。
4℃シナリオにおいては、世界の平均気温は現在よりも上昇することで、「物理リスク」が強まることから、台風や洪水など自然災害リスクが著しく増加すると想定しています。
シナリオ分析の概要
対象範囲 | 鉄道業(相模鉄道㈱)、バス業(相鉄バス㈱)、不動産賃貸業(㈱相鉄アーバンクリエイツ、㈱相鉄ビルマネジメント) |
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時間軸 | 2030年 |
選定シナリオと世界の変化 |
【1.5℃シナリオ】:世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて1.5℃未満に抑制するシナリオ ≪1.5℃シナリオで想定される世界の変化≫
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【4℃シナリオ】:世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて4℃程度上昇するシナリオ ≪4℃シナリオで想定される世界の変化≫
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参照情報 |
【1.5℃シナリオ】
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重要なリスク項目
【移行リスクの影響】
鉄道業では、特に電力消費に関わる温室効果ガス排出コストや電力の調達コストが増加すると予想されます。
バス業では、軽油単価は下がると予想していますが、それ以上に軽油使用に関わる温室効果ガス排出コストの増加の影響が大きいこと、環境負荷がより少ない車両の導入を促すような規制が強化されることで既存車両の代替が必要になることによるコストの増加を見込んでいます。
不動産賃貸業では、鉄道業やバス業より影響は小さいものの、温室効果ガス排出コストが増加すると予想されます。また、環境規制の強化による既存物件および新規取得物件の改修コストの増加を見込んでいます。
分類 | 当社への影響 | 影響度 ※1 | 顕在時期 ※2 | |||
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鉄道業 | バス業 | 不動産 賃貸業 | ||||
移行リスク (主に1.5℃ シナリオ) | 政策・法規制リスク |
| 大 | 大 | 小 | 中期 長期 |
技術リスク |
| ― | 中 | 小 | 中期 長期 | |
市場リスク |
| ― | 小 | ― | 中期 長期 | |
| 小 | 小 | 小 | 短期 中期 長期 | ||
評判リスク |
| ※ | 中期 長期 |
-
対象事業ごとに2030年度営業利益を100とし各項目の財務影響の比率を、絶対値で0%以上~5%未満を小、5%~10%未満を中、10%以上を大と分類
「―」:事業特性上、検討の対象外としたもの 「※」:影響は考えられるが、現時点での情報では定量化が難しく、今後も継続検討していくもの を示す - 短期:3年以内、中期:3年超10年以内、長期:10年超
【物理的リスクの影響】
鉄道業では、防災・減災対策のためのコストの増加や、気温上昇による車内の空調コストの増加が予想されます。
鉄道業・バス業ともに運休が発生し、輸送人員数が減少することによる営業収益の減少が予想されます。
不動産賃貸業では、商業施設の営業停止による賃料収入の減少や気温上昇による慢性的な空調コストの増加が予想されます。
分類 | 当社への影響 | 影響度 ※1 | 顕在時期 ※2 | |||
---|---|---|---|---|---|---|
鉄道業 | バス業 | 不動産 賃貸業 | ||||
物理的リスク (主に4.0℃ シナリオ) | 急性的 |
| 小 | 中 | 小 | 短期 中期 長期 |
慢性的 |
| 小 | ― | 小 | 短期 中期 長期 | |
| 小 | ― | 小 | 長期 |
-
対象事業ごとに2030年度営業利益を100とし各項目の財務影響の比率を、絶対値で0%以上~5%未満を小、5%~10%未満を中、10%以上を大と分類
「―」:事業特性上、検討の対象外としたもの 「※」:影響は考えられるが、現時点での情報では定量化が難しく、今後も継続検討していくもの を示す - 短期:3年以内、中期:3年超10年以内、長期:10年超
重要な機会項目
鉄道業では、再生可能エネルギーの普及や省エネ機器の技術開発が進むことによるコストの削減が実現できると予想しています。また、環境優位性が高い移動手段としての評価が高まり、自動車からの移行が進むことで輸送人員数が増加することを見込んでいます。さらに、災害対策の強化やBCPの見直しを行うことで鉄道の市場価値向上にもつながると考えています。
バス業では、気温上昇の影響によりこれまで徒歩で移動していたお客様がバスを利用する機会が増えることで、輸送人員数が増加することを見込んでいます。
不動産賃貸業では、ZEB仕様が標準化された場合、電力コストの削減や温室効果ガス排出コストの削減が見込まれます。また、環境性能の向上による管理物件の需要および賃料の増加につながると考えています。
分類 | 当社への影響 | 影響度 ※1 | 顕在時期 ※2 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
鉄道業 | バス業 | 不動産 賃貸業 | |||||
(主に1.5℃ シナリオ) | エネルギー源 |
温室効果ガス低排出の エネルギー源の使用 |
| 小 | ― | 小 | 短期 中期 |
| ― | 大 | ― | ||||
製品とサービス | 温室効果ガス低排出商品およびサービスの開発・事業領域拡張/消費者動向 |
| 大 | ― | ― | 中期 長期 | |
| ― | 小 | ― | ||||
| ― | ― | 小 | ||||
市場 | 新しい市場へのアクセス |
| ― | 中 | ― | 中期 長期 | |
| ※ | ||||||
レジリエンス | レジリエンスの向上 |
| ※ | ||||
| ― | 小 | ― | 中期 長期 |
-
対象事業ごとに2030年度営業利益を100とし各項目の財務影響の比率を、絶対値で0%以上~5%未満を小、5%~10%未満を中、10%以上を大と分類
「―」:事業特性上、検討の対象外としたもの 「※」:影響は考えられるが、現時点での情報では定量化が難しく、今後も継続検討していくもの を示す - 短期:3年以内、中期:3年超10年以内、長期:10年超
リスクと機会に対する各事業の対応
【環境負荷を低減するための各事業における取り組み】
事業への影響が大きいと特定したリスクと機会に対して、以下の取り組みについて検討を行います。
検討の結果、実現可能性が高い対応策として判断されたものについては、積極的に取り組みを推進しています。
【移行リスク】
鉄道業におけるCO2総排出量(2021年度)のうち、99%は「電力使用に伴う間接排出」が占めています。これに対しては、電力消費量を削減するために、引き続き20000系や21000系などの省エネ車両の導入を進めるほか、駅ホーム照明のLED化などを進め、さらなる省エネルギー化に取り組んでいきます。加えて、再生可能エネルギーのさらなる導入に向けた検討にも取り組んでいきます。
また、バス業におけるCO2総排出量(2021年度)のうち、96%は「軽油等の使用に伴う直接排出」が占めています。これに対しては、環境負荷の小さい低硫黄軽油の使用を継続し、ハイブリッドバスを順次導入していくほか、EV・FCVの普及動向を見据えつつこれらの導入に向けた検討を進めていきます。
不動産賃貸業では、ZEB仕様が標準化された場合、電力コストの削減の効果が高い見込みとなっています。引き続き、費用対効果を考慮のうえ、管理物件のZEB化を検討していくとともに、設備改修による省エネルギー化を推進していきます。
【物理的リスク】
鉄道業・バス業ともに、異常気象の激甚化による風水害による影響が大きいと考えられます。これまでも訓練の実施などのソフト面、設備増強などのハード面の両面からさまざまな対策を実施してきましたが、TCFDフレームワークを用いた気候変動の影響分析結果を踏まえ、災害対応力や体制の強化を図るなど、さらなるリスク管理に努めていきます。
不動産賃貸業では、施設への浸水による営業停止や設備故障の影響が大きいと考えられます。一定水準の浸水被害を想定した止水板の設置などは実施済みではありますが、今後の西口再開発に向けて他の事業者様とも連携し、災害に強い街づくりを進めていきます。
【機会】
鉄道もバスも、自家用車や航空機に比べると環境優位性が高い交通手段です。これを利用促進の機会と捉え、両事業とも「安全・安定輸送の確保」を礎に、「輸送サービスの充実」および「外出機会創出に向けた取り組み」を通じて運輸収入の増加、環境保全に貢献していきます。
不動産賃貸業では、物件の環境性能の強化による収益性の向上が期待できます。引き続き、物件の環境性能の強化に努めていきます。
分類 | 鉄道業 | バス業 | 不動産業 | |
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リスクへの対応 | 移行 リスク |
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物理的 リスク |
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機会の獲得 |
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【既存の取り組み事例】
グループ各社は環境負荷の低減に向けた取り組みを推進しています。既存の取り組み事例については以下をご参照ください。
リスク管理
相鉄グループでは気候変動による影響を重大なリスクとして認識し、環境負荷の低減に向けたさまざまな対応策の検討を「相鉄グループサステナビリティ委員会」と「相鉄グループサステナビリティ推進会議」が中心となり各事業会社と協働して行っています。
TCFD提言に基づく検討結果についても、グループ全体のサステナビリティの取り組みの基本方針その他重要事項の決議、業務執行の最終決定を行う取締役会に報告され、その内容について議論・検討を行っています。
指標と目標
鉄道業では、CO2排出量削減目標として「鉄道業で使用する電力(低圧電力を除く)によるCO2排出量を2030年度までに46%削減(2013年度比)」を設定しており、その進捗について継続的に評価・管理を行っていきます。
今後、TCFDのシナリオ分析の結果も踏まえ、相鉄グループでより一層のCO2排出削減を着実に進めるため、環境負荷削減目標の設定を行い、その達成に向けて積極的な取り組みを行っていきます。